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WCC、米大使館エルサレム移転に抗議声明

投稿日:2018年5月24日 更新日:

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米国は5月14日、イスラエルの都市テルアビブからエルサレムに駐イスラエル大使館を公式に移転した。それに対し、世界教会協議会(WCC)が抗議声明を発表した(最後に全文を掲載)。

WCCのウェブサイトに掲載された抗議声明

内陸部の小高い丘の上にあるエルサレムがイスラエルの人口第1位で、地中海沿岸にあるテルアビブが第2位の都市。イスラエルはエルサレムを首都と主張しているが、国際連合などはテルアビブを首都としている。米国は昨年12月6日、エルサレムをイスラエルの首都と認定し、大使館をエルサレムに移転する手続きを始める指示をした。これは約70年にわたる外交転換を意味する。

イスラエル独立宣言70周年を迎えた5月14日、在エルサレム米国総領事館の旧所在地にあたるエルサレムのアルノナにアメリカ大使館が開かれた。それに対し、イスラエルとガザ地区の国境沿いでパレスチナ市民約4万人がデモを行い、イスラエル軍が非武装のパレスチナ市民61人を射殺した。

WCCのオラフ・フィクセ・トヴェイト総幹事はその2日後の16日、コメントを発表した。

正当な平和と、聖地エルサレムの赦しのために

世界教会協議会(WCC)総幹事オラフ・フィクセ・トヴェイトは、先週、多くの人々、そして彼らの愛する人々が命を落としたガザ地区の一般市民の抵抗者に対するイスラエル軍事力による行き過ぎた暴力の使用を非難しています。また、アメリカ大使館のエルサレムへの移転を神からの贈り物として祝う一部のクリスチャンに対して懸念を抱いています。この移転はあまりにも挑発的な性質を持つものです。

「ガザ地区のデモに対する軍事的対応は、複数の子供を含む多くの死者、何千人もの死傷者という結果を生んでいます。そして、その数はいまだ増加しています。この暴力と流血は、国際機関によって非難されるべきであり、国際的な調査下に置かれなくてはなりません。事態は、これらの出来事の水面下でのいっそう深い理解を必要としています。

抵抗者たちは自らの市民権を、パレスチナ人として置かれている現在の状況への不服と失望を表すために行使しています。彼らの家族が70年前に経験した大災害『ナクバ』は、多くのパレスチナ人にとって──特にガザ地区在住の人々にとって、解決法のない居場所のなさと苦しみの原因であり続けています。子供を含む非武装市民が銃撃され、殺され、多くの人々が傷つけられていることは、『一国の自衛の権利』の表れとしては法的にも道徳的にも擁護され得ないことです。これは、イスラエルが本来尊重し保護するべき人々に対する許されない暴力の行使として受け止められなければなりません。

エルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教という3つの宗教が共有する聖地です。聖地における包括的で持続可能な平和は、国際社会が定めた境界線に沿って聖地を2地域に区分するという解決法を基盤としなければなりません。

今回の抵抗は、アメリカ大使館を『分かれていないエルサレム』に移転するというアメリカの一方的な決定に対するものです。この行為は、エルサレムに関する今までの国連決議のすべてに反旗を翻すものであり、平和的で正当な解決法への深刻な障害を生み出しました。エルサレム問題は議論なしに進められたことはありませんでした。むしろ、国連の活動による非常に流動的な平和交渉の議論における最も困難な問題の一つであり続けています。

5月14日の抵抗運動は、アメリカ大使館のテルアビブからエルサレムへの正式な移転と、イスラエル建国70周年記念祝典に対するものでした。5月15日の抵抗運動は、その70周年記念祝典に焦点があてられました。パレスチナ人は70年前のこの出来事を『ナクバ』あるいは『大災害』と呼び、1948年のイスラエル建国時に何十万人の人々が住み家を追われた時だとしています。

計り知れない重要性を持ち、3つの信仰と2つの民族に愛されてきたエルサレムという都市の立場は、平和交渉を通して解決されるべきであるという長年の理解に対して、WCCは一貫して賛同し続けてきました。

このような時にすべて行動を起こす者──特にイスラエルの強力な国家と諸外国は──正当な平和のために努力し、生命の尊厳を最大限に尊重しながら行動し、事態の進行につれてますます高揚するであろうあらゆる形の暴力の制止を実行に移さなければなりません。

一部のクリスチャンがアメリカの決定を神に感謝していることは、地域的にも国際的にも、教会にとって非常に深刻な事態です。この決定は国際法と国際政治を嘲笑し、侮辱するものであり、さらにはエルサレムを首都として共有する両民族への国際的な共通理解を基盤とする平和への道程を蝕み、服従・圧迫されたパレスチナ人を挑発するものです。このことは、自らの信仰を和解と平和のための働きに駆り立てるものとして理解するすべての者に関わってきます。

エルサレムの未来に関するあらゆる一方的な決定は、聖地における平和への努力を蝕むであろうという前もっての警告が省みられることなく、素通りされたということは、現在の暴力と直接関連づけられ、非常に悲しむべきことです。このことは決して避けて通ることはできません。この上さらに、『アメリカ大使館のエルサレム移転が、聖地における状況の永続的な解決策を見つけるだろう』という反応について、私たちは深く憂慮しています。

国際社会が、国際協定と決議に沿いつつ、聖地に住むすべての人の切なる願いを尊重した、公正で実現可能な解決策に向けて、あらゆる努力を惜しまないよう、私たちは促します。巨大な暴力が渦巻き、脅威がますます大きくなっても、私たちはWCCのメンバーである諸教会と共に、次のような希望と祈りを持ちます。願わくは、平和へのたゆまぬ努力が現在の悲劇的な暴力を克服し、「剣は鋤へ、槍は刈り鎌へと打ち直される」時を導きますように。

WCCは、聖地にある私たちのメンバーの諸教会との連帯を表明し、これからも和解と正義と平和のための彼らの働きの伴走者であり続けます」

(翻訳:野川祈。記事用に編集しています。原文はこちら

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雜賀信行(さいか・のぶゆき)

雜賀信行(さいか・のぶゆき)

「クリスチャン・プレス」編集長。カトリック八王子教会(東京都八王子市)会員。日本同盟基督教団・西大寺キリスト教会(岡山市)で受洗。1965年、兵庫県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。90年代、いのちのことば社で「いのちのことば」「百万人の福音」の編集責任者を務め、新教出版社を経て、雜賀編集工房として独立。

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