インタビュー

資金規模52億円、ワールド・ビジョン・ジャパン事務局長の木内真理子さんに聞く(前編) 「すべての人々に『何もかも』はできなくとも、誰かに『何か』はきっとできる」

投稿日:2019年8月8日 更新日: -

 

「すべての子どもに豊かないのちを」というビジョンを掲げる国際NGO「ワールド・ビジョン」は1950年、米国人宣教師ボブ・ピアスによって創設された。48年、第2次世界大戦後の混乱する中国に派遣されたピアスは、「すべての人々に『何もかも』はできなくとも、誰かに『何か』はきっとできる」と、一人の少女の学費と生活費の支援を開始。それがワールド・ビジョンの主要な活動「チャイルド・スポンサーシップ」を始めるきっかけとなった。

現在はアフリカやアジアを中心に、約100カ国に活動が広がり、資金規模約3000億円と世界有数の国際NGOへ成長している。日本では87年にその働きが始められ、現在では資金規模52億円、29カ国で135の支援を行っている。

ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ、東京都中野区)事務局長の木内真理子(きない・まりこ)さんに話を聞いた。

1965年、神奈川県生まれで、3代続くクリスチャン家庭で育った。青山学院大学を卒業後、国際協力銀行(JBIC)前身の海外経済協力基金(OECF)に入行。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス大学院(開発社会政策学)とオックスフォード大学院(開発経済学)で修士号取得後、アフリカ、インドネシア、フィリピンで円借款業務を担当。母親になったことを契機に転職し、2005年から東京大学サステイナビリティ学連携研究機構で、気候変動、環境、貧困など、21世紀の課題に対応する国内の研究教育拠点形成に従事。08年、WVJへ入職。ルワンダ、ウズベキスタンなど6カ国で長期開発事業を担当。11年、東日本緊急復興支援部部長。13年、副事務局長兼戦略企画室長。17年、事務局長に就任した。現在、日本基督教団本郷教会員。

ワールド・ビジョン・ジャパン事務局長の木内真理子さん

──WVJの活動内容について教えてください。

大きな活動の柱として、途上国の「開発援助」、災害時などにおける「緊急人道支援」、社会や政府に対して働きかける「アボカドシー」の3つが挙げられます。中でもメイン事業の「チャイルド・スポンサーシップ」は、子どもが健やかに成長できる環境を整えるための地域開発プロジェクトとして、水衛生や教育、保健、栄養など、生活に関わる多くの面で支援を行っています。

子どもが健やかに成長するためには、学校教育や医療面の充実、家庭の安定、周りとの関係と、さまざまな要素が必要です。子どもがいるコミュニティーが貧困な場合、大人は生きることに精いっぱいです。そんな状況では、子どもが豊かに育つ環境はなかなか整えられません。だからこそWVJでは、単にものや資金を送るだけでなく、コミュニティーが安定した収入を得て自立すること、誰もが教育を受けられる環境を整えていくことを大切にしています。

──チャイルド・スポンサーシップは毎月4500円の寄付で、子どもの成長だけでなく、子どもが住む地域全体を継続的に支援する活動ですが、チャイルド・スポンサーになると、どのようなことができるのでしょうか。

まず、支援地域に住む特定の子ども「チャイルド」とつながっていただきます。スポンサーには、そのチャイルドから定期的に手紙や動画で成長記録が送られてくるほか、支援地域での活動報告や最新情報も届けられます。スポンサーは、手紙や動画を通してそのチャイルドの成長を実感していただくと同時に、寄付金がどのように使われているか、コミュニティーの成長を通して知ることができるんですね。また、実際に支援地を訪問して、そのチャイルドに会いに行くこともできます。

──活動資金はどのように集められているのでしょうか。

WVJに寄せられる資金の約6割はチャイルド・スポンサーシップによるもので、その他にも募金、国際機関や政府などからの補助金によって活動しています。2018年度は、日本だけで52億円以上、世界では約3000億円に及ぶ資金を集めました。

人と人の心をつなぎ、子どもの豊かないのちを伝えていく手段として「チャイルド・スポンサーシップ」があることは、WVJの活動が広がる大きな原動力になっていると思います。

WVJでは、次の4つが整うことを目指して活動をしています。子どもが①「健康であること」、②「教育が受けられること」、③「守られている存在であり、社会に参画できていること」、そしてここがユニークなポイントなのですが、④「神と隣人に愛されていること」。創設者ボブ・ピアスの「すべての人々に『何もかも』はできなくとも、誰かに『何か』はきっとできる」というパワフルなメッセージとともに、私たちの活動をお伝えできているのは、とても意味のあることだと思います。

──最近のWVJの取り組みについても教えてください。

毎年、世界の問題を子どもたちに知ってもらうワークショップ「サマースクール」を夏休み期間中に開催しています。とても好評で、昨年から親子で参加できるプログラムにリニューアルしたところ、今年は応募が規定の3倍を超えました。親子で写真絵本を一緒に読んだり、途上国のタンクを使った水汲み体験をしたりして、日本と世界との違いを知り、家庭でも話し合っていただくなど、アクションを起こすきっかけになればと思っています。

また、東京マラソン2020チャリティーの寄付先団体に選ばれ、チャリティーに参加してくださる方も募集しています。現在募集しているのは、クラウド・ファンディングで10万円以上の寄付を集めた候補者のうち、上位300人がチャリティ-・ランナーとして出走できるというもの。

二人のスタッフと、事務所ボランティアとして活動してくださっている久保田典江さんもエントリーしています。久保田さんは生まれつき耳が聞こえないのですが、「これまで社会の方に助けていただいたからこそ、自分自身が頑張る姿を伝えることにより、途上国を支援できたら」という思いから参加してくださいました。

WVJを寄付先に選んでいただくと、不衛生な水で命が脅かされているアフリカの子どもたちに水を届ける事業へと寄付金は使われます。クラウド・ファンディングは9月13日まで受け付けているので、応援していただけたら嬉しいです。(後編に続く)

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