NHK連続テレビ小説「エール」のキリスト教考証(1)聖歌隊裏話 西原廉太(立教大学文学部長、立教学院副院長、キリスト教学校教育同盟理事長)

 

NHK連続テレビ小説「エール」(月~土、午前8時、総合ほか)の放映が3月30日から始まっています。「長崎の鐘」や「栄冠は君に輝く」(全国高等学校野球大会の歌)のほか、「六甲おろし」(阪神タイガースの歌)、「闘魂こめて」(巨人軍の歌)などの応援歌の数々を作曲した古関裕而(こせき・ゆうじ)さんと、妻で歌手としても活躍した金子(きんこ)さんをモデルに描く、音楽と共に生きた夫婦の物語です。

福島で生まれ、多くの名曲を生み出すことになる作曲家・古山裕一(こやま・ゆういち)を窪田正孝(くぼた・まさたか)さん、のちに裕一と結婚する関内音(せきうち・おと)を二階堂(にかいどう)ふみさんが演じています。

2日に放映された第4回では、小学5年生になった裕一(石田星空)が母まさ(菊池桃子)に連れられ、福島県・川俣町にある母の実家に行った時のことが描かれました。そして、美しい歌声に導かれて教会の扉を開くと、聖歌隊の真ん中に少女(清水香帆)が立っており、それが後に妻となる音との運命の出会いとなるというシーンがあります。

その回のタイトルバックでは、立教大学聖歌隊や私の名前がクレジットされました。実は私は、本ドラマの「キリスト教考証」者として、脚本・台本についてのアドバイス・検討・考証、また俳優さんたちへの演技指導などで協力させていただいたのです。

日本聖公会・福島聖ステパノ教会(同教会ホームページから)

このシーンの撮影のため、立教大学聖歌隊指導者のスコット・ショウ先生にご協力いただき、立教大学聖歌隊には、ロケ地となった日本聖公会東北教区・福島聖ステパノ教会まで行ってもらいました。この教会は、立教大学校(現在の立教大学)初代校長で、建築家としても著名なジェームズ・ガーディナー師の助言を受け、英国聖公会宣教師であったウィリアム・スマート師の設計により1905年に建設されたものです。

立教大学聖歌隊がドラマ中で奉唱していたのは聖歌「いつくしみふかき」です。実は現在の日本聖公会『聖歌集』482番(1956年版日本聖公会『古今聖歌集』486番)と、ドラマが設定されている1920年代の『古今聖歌集』にある「いつくしみふかき」とは、歌詞もメロディーも異なります。ただ、「いつくしみふかき」のメロディーは当時、「星の界(よ)」(月なきみ空)という歌詞が付されて中学唱歌にも採り入れられ、この曲自体、一般にもよく知られていたので、ドラマでは現在の482番をそのまま歌ってもらいました。

平安女学院聖歌隊

また、1920年代の立教大学聖歌隊は全員、男性だったので、今回は設定上、京都の平安女学院の聖歌隊ということにさせていただきました。当時、女子のみによる聖歌隊が存在していたかどうかを調べたところ、23年、キャソック(立襟の黒い祭服)に白のコッター(上着)を着た平安女学院聖歌隊の写真が入手できたためです。実際に出演してくれたのは、もちろん立教大学諸聖徒礼拝堂聖歌隊の女性メンバーです。

聖歌「いつくしみふかき」の収録は、昨年8月10日に渋谷のNHKスタジオで行われました。その際は「いつくしみふかき」のほかに、「きよき岸辺に」(日本聖公会『聖歌集』518番)も収録され、映像の中でも歌われました。(に続く)

西原廉太(にしはら・れんた) 1962年、京都府生まれ。87年、京都大学工学部金属工学科卒業、91年まで日本聖公会中部教区名古屋学生センター主事、94年、聖公会神学院神学部卒業、95年、立教大学大学院文学研究科組織神学専攻修士課程修了、日本聖公会執事、98年、立教大学文学部キリスト教学科専任講師、2000年、助教授、07年、教授。博士(神学・関西学院大学)。専門はアングリカニズム(英国宗教改革神学)、エキュメニカル神学。日本聖公会中部教区司祭、世界教会協議会(WCC)中央委員を務める。

 






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